エンゼル・コレクター

みなさん、『水曜どうでしょう』という番組を知っているかい?このホームページを見ている人の半分は「もちろん!」で、半分は「知らな〜い」といったところか。クイックジャパンやいろんな雑誌で取り上げられているから知っているけど見たことはないという人もいるんじゃないかな。この番組にでている「ミスター」こと鈴井貴之が監督の『銀のエンゼル』という映画の公開前夜祭に行ってきた。前売りのチケットが発売後3分で売り切れたらしい(すごい!)。北海道のいちローカル番組の影響がこんなにもすごいとは・・・。会場の映画館はめちゃでかいところでオーケストラのコンサートもできちゃいそうな規模の映画館で、もはや「ホール」だった。俺たちがいたところから舞台が結構遠い。そんで、その会場を観衆が埋め尽くしていた。その数、推定うん千人。おそらくこの映画を「どうでしょう」から知った人がほとんどだろうと思うと・・・「どうでしょう」恐るべし。全国の「どうバカ」のみなさん、「洋君は私のものっ!」っていってられないよ、倍率高すぎ。
前夜祭ということで監督の鈴井さん、大泉洋(どうでしょうに出ている。近々月9にでるみたい、ワオ!)、小日向文世さん、佐藤めぐみちゃんといった出演の面々の舞台挨拶があった。舞台に彼らが登場すると客席から大きな歓声が上がった。ミスター・・・否、鈴井監督のしゃべりは好調でかなりの饒舌で、「司会者」並みによくしゃべっていた。一人一人出演者が紹介されて最後に大泉洋が紹介されるとものすごい歓声。すると俺も「わーっ!」って言ってしまった。彼のエンターテイメント性っていったらもう最高だった。ほんとに笑わせてくれる。「どうでしょう」のまんま。
で、映画の話なんだけど、この映画おもしろい、よかった。中身は見てからのお楽しみだからちょっとしか言わないけどキーポイントは「コンビニ」。コンビニは良くも悪くも、もはや俺らの生活に馴染みまくってしまった存在。この映画に関して言えば、「コンビニ」をつかったのは大成功だったんじゃないかな。映画の中における位置づけとして。
コンビニってどこ行っても店の雰囲気とか一緒じゃん。そりゃあ、都会のど真ん中のコンビニと、ど田舎のコンビニを比べたときって違いはあるけど、店の大きさとか店員の態度とか以外極端な違いってあんまりないと思うんだよね。基本的に24時間営業で、何でもそろってて、音楽はどこの店も同じみたいな・・・。それを悪く思う人もいるだろうけれど、この映画ではそれを逆手に取っている。つまり、店ごとに外見の違いがなく、さらには俺らにとって身近な存在のコンビニだからこそ、舞台は北海道なのにうさんくさい「北海道らしさ」みたいなものをなるべく気にしないで見ることが出来る。そうやって、俺らにとっての観易さを演出している。そいで、その中で人間のドラマを描く。
俺らの世代ってわりと人間同士の中に共通の世代性を見出すのって結構厳しいと思うんだよね。個人でいろいろやってたりしてさ。でも、コンビニが俺らの日常の一部だと言ってしまえなくもないと思う。古きよき時代って言葉は嫌いなんだけど、小津安二郎の銀幕の風景が昔のスタンダードなら、今のスタンダードな日常の風景の一部として「コンビニ」は存在するんじゃないかな。そういう意味で俺はこの映画の描き方はとってもポップなんじゃないかなあと思う。ここまでポップな映画の撮り方できる人は、俺が見てきた映画の中では他に思いつかない。だってどれもこれも、非日常的過ぎるんだもん。俺がそういう映画ばっか見てきたのもあるんだろうけど、そうじゃなくても舞台が「どこそこ」ってなると、どうもその設定自体から俺らの日常までの距離はすごい遠かったり。まあ、「映画ってそういうもの」って言われるとそれまでなんだけどね。でも、なんか「背伸びしないでもそこにある日常のドラマ」的なものに魅かれる俺としては日本映画でそういうのがあるって思えたのはすごいうれしいことだったりするなあ。壮大ではないけれどそのドラマが俺らに結構近い場所にある。
今の日本の映画監督のちょっとしたところで話題になったりする作品て、ヌーヴェルバーグの孫世代みたいな風にしか思えん。難しいこと俺らに押し付けすぎなんじゃ!そのくせにおとなしすぎる!でも、ナインソウルズとか面白い映画はいっぱいあるんだけどね。「コンビニ」って、なんかその無機質とか便利さとかっていうところでしか語られなかったけど、やっぱ「人」がやっているんだなあ、ってことを気付かさせてくれた。ホントいいところはいっぱいあったなあ。誰か他にも観た人とお話がしてみたいもんだな。
で、物語の感想はそれこそそれぞれどういう風に思うかにお任せします。いつか観てみてくださいね。鈴井監督も言ってました。「じわじわ人気が出てきてくれればいいなあ」なんてなことを。

「おにぎり温めますか?」